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『江戸小紋』の由来

 当店のホームページでは、江戸小紋の名前の由来について、
  『江戸小紋という名称は、京都などの多彩色の小紋と区別するために昭和29年に文化財保護委員会が名付けたものです』ご案内しています。

 もちろんこれは本当のことです。
 ところが先日、とっても江戸小紋通の紳士がご来店。

 「その記述は間違いのないことですが、もっと以前に“江戸小紋”という呼称が使われている小説があるのですよ」と教えて頂きました。

 永井荷風 『腕くらべ』  という小説だということで、早速買って読んでみました。
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 『腕くらべ』という小説は、ヒロインである新橋の芸妓「駒代」を中心とした花柳界の人間模様が描かれています。

 駒代には本命の立派な旦那があり身請けの話をされるのですが、芸妓をやめて妾になるのも・・・と乗り気になれずにいるところ、人気者の女形の歌舞伎役者 瀬川一糸と出会い、遊び上手な瀬川にのめり込み結婚を夢見て逢瀬を続けます。

 しかしそれが旦那の知るところとなってしまって、つらあてに旦那は駒代と同じ置屋の芸妓を身請けしてしまいます。さらに役者の瀬川はお金持ちの芸妓に乗り換えて・・・

 義理人情をわきまえない男の腕くらべに翻弄され敗れ去るという、意地と誠に生きた芸妓駒代をめぐるお話です。
 
 ところでいったい誰がどの場面で「江戸小紋」を身にまとうのかとワクワクしながら読み進みましたが、それがなんと!
 瀬川一糸が駒代を捨ててお金持ちの芸妓のところに行こうとする際に身にまとったのが「江戸小紋」でありました。

 瀬川一糸は色っぽい美形の役者、しなやかな江戸小紋を二枚重ねに着て、長襦袢は鶸色で…、ごねる駒代を口先で慰めながら置き去りにする際の出で立ちが描かれています。
 この江戸小紋がどんな色で、どんな柄であったのかの記述はありませんが、色々想像してみたくなります。
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 江戸小紋は江戸時代には武士の裃に染められ、それが江戸中期には町人たちにも広まりました。その後明治になって武士階級が廃止されてからは、主に江戸小紋は女性の着物として愛用されてきました。

 この『腕くらべ』が書かれたのは大正6年です。
 永井荷風はこの時すでに「江戸小紋」という呼称を用いていました。
 そして、“粋”が身上の「江戸小紋」を花柳界の花形である人気役者に着せるなんて、ちょっと憎い描写です。
 「江戸小紋」という文字を発見した時には少し驚きました。
 
 近頃では男性の方のお問い合わせもチラホラと頂くようになりました。
 紬も御召も良いけれど、こんなにしなやかで肌にそう「江戸小紋」を、ぜひ男性の皆さまにも袖を通して頂ければと思います。

 するときっと、駒代のような美しい女性に思いを寄せられることとなりましょう~。
 粋な大人の着こなしを、ぜひ見てみたい!!016.gif






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ところで、ところで、
昨日からブログとは別に日々の日記をはじめました。
ブログを更新するのがついつい遅れがちになるもので・・・
この日記なら毎日続きそう~かな?
こちらは本当につれづれな「よもやま日記」でございますが、定休日以外は毎日更新予定です(今のところは)。
お暇な時にでもどうぞ!
by someichie | 2009-05-27 19:09 | 江戸小紋のお誂え