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伊勢型紙手付けの究極の技~万筋(まんすじ)~

 伊勢型紙の技術の中でも希少となってしまった、「縞彫り」の型紙で染める「万筋」という江戸小紋のお話を少々。。。

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 「万筋」の型紙は短時間で一気に、定規をあてて均等の縞柄を彫りあげます。
 単純な作業のようですが、一本の縞を彫るのに同じ箇所を3度続けて小刀でなぞるので、極めて正確な技術が必要とされます。
 しかし、縞を彫っただけでは、何本ものストライプの線がヒラヒラと浮き上がった状態のままです。このままでは染め師さんがヘラをあてることができず型付けができません。

 この型紙のすごいところは、ヒラヒラを抑えるために「糸入れ」という技術が施されているところです。
 「糸入れ」とは、あらかじめ型地紙を2枚にはがし重ねて彫ってから、その間に絹糸を張ってずれないように柿渋で張り合わせるという作業です。
 伊勢型紙の産地には、昭和30年に6名の重要無形文化財保持者(人間国宝)が指定されましたが、その中には「糸入れ」の城ノ口みえさん(2003年死去)も入っていました。
 「糸入れ」は彫りの技術と同様に、貴重な技術なのです。
 現在では、この糸入れの技術が最も稀少なものとなっています。

 こちらが「万筋」の型紙です
 横に絹糸が貼ってあるのがわかるでしょうか?
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 さて、この型紙で染め上げる「万筋」は何とも言えない味わい深い江戸小紋として、多くの江戸小紋ファンに愛されてきました。
 まず、単純なストライプだからこそ、線の太さが微妙に異なります。それがコンピュータのストライプとは異なる“しなやかさ”を生み出します。
 縞柄は「粋」な柄として江戸時代には大変もてはやされました。
 ストンと縦に落ちる縞は、小雨がや柳に通ずるようなしなやかさがあり、その粋な風情がたまらなく好まれたのです。

 そして、染め上げたときに、先ほどの「糸入れ」の後がほんわかと残ります。
 「糸入れ」をした細い絹糸が張ってあるところには、しっかりと生地まで防染糊がおりません。
 そのため地染めをした時に絹糸が張ってあったところも一緒に地色に染まってしまう部分が出てきます。
 なので、よ~く見ると、横に細~く、ところどころ、ヒュンヒュンと横線が見えます。
 写真でお伝えするのがなかなか難しいのですが、わかるでしょうか?
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 「万筋」の味わい深さは、手業であればこそ生まれる“しなやかさ”と“粋”の風情です。

 現在店内にある染めあがりの反物では、万筋二つ割りの染めあがり江戸小紋と毛万筋の染めあがり江戸小紋があります。

 こちらは、万筋二つ割り江戸小紋
 二つ割りとは3㎝幅に23本の縞が染めてあるものです。こちらは、グレーとも紺とも紫とも違う大変ニュアンスのある粋なお色で染めあがっています。
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 そして、こちらは毛万筋江戸小紋
 毛万筋とは3㎝幅に19本の縞が染めてあるものです。万筋というとグレー系などのお色が好まれますが、こんなきれいなお色では如何でしょうか?
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 少しお値段もさすが!な反物ですが、見るだけ、あわせるだけも大歓迎です。

 希少な技術の粋を結集した「万筋江戸小紋」

 江戸小紋好きなら、いつかは、ぜひ一枚!
 そう思わずにはいられない「“万筋”がつくりだす粋の世界」です。   
 ぜひ一度、じっくり、ゆっくり、ご覧頂きたいと思います。

 ホームページではこちらでご紹介。   
   万筋二つ割り江戸小紋「粋さらさら
   縞文様の江戸小紋
by someichie | 2008-05-13 20:11 | 伝統工芸の「技」